目的
今回は、脂肪族系のカプリル酸と、芳香族系のフェノールを使用してエステル化反応を行い、アルコール物質としてフェノールのような嵩高い芳香族系の化合物の場合、反応速度がどうなるか、また、トルエンの有り無しで、反応速度及び触媒樹脂(アンバーリスト-15)の劣化がどうなるかを検討した。
同時に、反応後に触媒を洗浄して再使用した場合に反応速度がどうなるかも調べた。
水抜き反応装置実験法
ゼオライト膜の外径は12mm、蒸気上昇部カラム径は外径20mm(内径16mm)、カラムとゼオライト膜とのクリアランスは2mmのものを使用した。触媒を再使用する場合には、反応後に反応液をデカント除去し、新品トルエンで5回洗浄して用いた。カプリル酸に対するフェノールのモル倍率を2倍一定とし、反応温度はすべて120〜124℃である。
測定結果
反応時間と転化率の関係、生データ、および反応仕込条件を下記に示した。
<図1>経過時間と転化率の関係
<図2> 実験の生データ
<図3>仕込み条件
測定結果の考察
- アルコール物質が嵩高いベンゼン系のフェノールでもエステル化反応は充分速くできる。
脂肪族系のアルコールと大差ない程度にすることが可能である。
これはトルエンを使用すると、 水抜きが促進されるためである。 - トルエン使用したとき(Exp16-27,28,29)、不使用の場合(Exp16-26)に比べて反応速度は格段に速くなる。
トルエン不使用の場合は、水抜きが充分行なわれないため反応が平衡になってそれ以上進まない。 - 触媒が新品の場合も再使用の場合も、反応速度は変わらない。
これはトルエン中で回転子によって液を攪拌しても、樹脂の磨耗がほとんどないためと思われる。 - トルエン中120〜124℃で触媒を繰返し使用しても触媒の劣化はみられなかった。
従って、本反応では触媒の再使用は充分可能で、工業的にも有利な方法と思われる。