目的
前回に引き続いて、自己与熱式3重保温カラム(25mmΦ×1000mmH及び1300mmH)に充填密度が0.60g/ccになるように、0.10mmΦSUSネットを充填し、蒸留塔の 性能テストを行なった。
今回は、充填高を1000mmH、1300mmHと2種類のものを使用して、加熱負荷電圧を変化させたとき、塔内気液平衡が安定状態で理論段数、HETP、圧力損失がどのように変わるかを調べた。
自己与熱式3重保温蒸留塔の構造
蒸留塔の構造は、釜フラスコから上昇する蒸気が本体と外カラムに分かれて上昇する構造となっている。
外カラムに上昇する蒸気は、本体のカラム温度とほぼ等しく、本体に熱を与えて保温を行なう働きをる。
さらにその最外側に真空ジャケットを付設した3重構造になっている。
塔性能の測定方法
理論段数は前回同様、Fenske の式を使って算出し、HETP(mm/段)は充填高を理論段数で割って算出した。
圧力損失はU字管に水を入れて、塔頂と釜フラスコの差圧を実測した。
測定結果
<生データ>
<結果のグラフ化>
<測定条件>
充填塔; 内径25mmΦ、充填物 桐山SUSネット0.10mmΦ
蒸留釜フラスコ; 容量3L、モノヒート加熱
測定試薬; n-ヘプタン(bp98.4℃)/メチルシクロヘキサン(bp100.9℃)=50/50wt
測定結果の考察
- 充填高1000mmの場合、加熱負荷電圧55〜62.5Vの範囲で、理論段数=62.1〜76.4段、HETP=13.1〜16.1mm/段、塔圧力損失=20〜80mmH2Oであった。
- 充填高1300mmの場合、加熱負荷電圧55〜62.5Vの範囲で、理論段数=58.5〜84.6段、HETP=15.4〜22.3mm/段、塔圧力損失=10〜40mmH2Oであった。
- SUSネットを充填した自己与熱型3重保温蒸留装置は、HETPが小さく効率的で、圧力損失も非常に小さいことがわかった。圧力損失が塔高1000mmと1300mmで逆転しているが原因はわからない。
圧力損失はわずかな蒸留条件によって変化するようである。
スルザーパッキング対応
本蒸留装置は、スルザー規則充填物や、その他の不規則充填物等を目的に合わせて使うこともできる。